
~夫の写真に35年の歳月感じ~
夫のアルバムが実家から出てきた。懐かしいフエルアルバ
ムで、不意に茶の間が昭和の香りに包まれた。フエルアルバ
ムとは写真を貼る台紙を継ぎ足せる糊が不要のアルバムで
あるが、3年前、店の若い店員に「フエルアルバムありますか」
と尋ねたら、何とも通じない。外国にいるようで苦笑。いつの間
にかフエルアルバムは死語になっていた。
それはさておき、夫のアルバムに納められていたのは35年
ほど前、20歳過ぎの写真。私たちは10年ほど前に出会った
ため、35年前の夫を知らない。仕事から帰るや否やすぐに見
たい心を抑え、晩御飯や洗濯を済ませた後の団らんにゆっくり
と眺めた。
そこには青年の夫が写っていた。その中に大好きなオートバ
イとともに南阿波サンラインの展望台で撮った写真があり、生
き生きした夫の背景にある椰子の木に釘付けになった。現在、
展望台の椰子の木は見上げるほどに成長しているが、夫の背
後にある椰子の木は背丈より少し高いくらいだった。夫も椰子
の木も35年という歳月が流れ、枯れることなく元気でいるのが
嬉しい。
欲を言えば、夫もまたもう少し早く出会いたかった一人であり、
出会えたことに感謝したい。(了)
鉄線
(※2019/02/15 徳島新聞「読者の手紙」に掲載済)
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