阿波しらさぎ文学賞・応募要領決まる!
- 2018/01/31(Wed) -
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阿波しらさぎ文学賞・応募要領決まる!
昨日の徳島新聞一面に応募要領が出ていたのでアップ。

                        鉄線


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「阿波しらさぎ文学賞」創設される
- 2018/01/14(Sun) -
IMG_5041文学賞

今朝の徳島新聞トップ記事。「阿波しらさぎ文学賞」創設。
徳島新聞社の文学賞、やっとできましたね。いざ、いざ。

                        鉄線






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『炎の桜』⑨ (最終話)
- 2015/01/07(Wed) -
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 禾穂は意味深な笑みを浮かべながら、煖を抱きしめた。遠目には抱き桜の中に
もう一本、抱き桜があるように見えるだろう。禾穂と煖は抱き桜のようにしっかり絡
みつき、一つになったまま、時を惜しむように何時間も離れなかった。晴れてはい
たが、とても風の強い夜だった。出かけ際に怒った結子の生き霊が宿る風のようだ
と禾穂は思った。闇夜の中に白く浮かび上がる二人を降りしきる桜吹雪がレース
のカーテンのごとく被い隠した。
「煖さん、こんな私を愛してくれてありがとう。驚かないで聞いてね。私はこの桜と同
い年の山姥なの。二百年前、哀しい殺され方をしてその怨念から生き返った醜い山
姥なの。再び、誰かを愛し、その想いを告げた時、元の人間に戻り、成仏ができるの」
 禾穂の告白に煖は思いのほか冷静だった。醜い山姥だという禾穂から離れること
なく、より一層、力強く抱きしめた。
「山姥でも僕はかまわない。心はわかっているから言葉にしなくていい。消えてしまう
なら言わないで」
 既に禾穂の体からは青い炎が仄かに立ち始めていた。愛を実際に告白したかどう
かは関係ないようである。心に再び人として熱い血が通い始めた時、山姥は人に戻り、
成仏するようである。
「禾穂さん、だめだ。告白するんじゃない。行かないで、行かないでったら」
「煖さん、あなたに会えてよかった。愛しています。ありがとう。赤花夕化粧、うれしかっ
た。忘れない」
 気がつけば、煖の体からも青い炎が立ち上がっていた。自分の火が燃え移ったのか
と思い、禾穂は煖から離れようと藻掻いたが、煖が離れようとはしなかった。
「禾穂さん、僕もあなたが大好きだから。誰よりも愛しています」
 煖はそう言いながら、水引で拵えた美しい赤い指輪をポケットから取り出し、禾穂の
右の薬指に填めた。思いがけない贈り物に禾穂は嬉し涙を流した。いつの間にか、青
い炎は満開の紅しだれにも燃え移り、赤い炎を放ち始めた。
「早く私から離れて。焼け死んでしまうわ」
「愛する人に告白したから僕も成仏できる」
 その言葉に禾穂は亡き子どもを思い、煖は亡き母を感じていた。二人はメラメラと燃
えながら幸せだった。抱き桜は燃えながら大量の桜吹雪を降らせた。花びら一枚一枚
は炎の花びらであり、吹筒花火のようだった。いつしか、二人の燃える炎は抱き桜の
燃える炎と一つになり、大きく真っ赤に燃え上がる炎の桜になった。
 櫻堂に火柱が上がっている、と消防団や集落の人々が櫻堂に駆けつけてきたのは、
それから小一時間経ってからだった。その頃には二人は既に灰燼と化し、その姿はな
かった。抱き桜の炎は櫻堂や他の木々、集落に燃え広がることなく、焼けたのは抱き
桜のみだった。

 次の朝早く、結子は二人を捜しに家を出た。櫻堂まで下りて来た時、抱き桜は黒炭
と化してもなお抱き合っているのがわかった。抱き桜を見上げた時、結子は煖と禾穂
が上から見下ろしているかのような不思議な感を覚えた。二人を捜しに出てきたもの
の、もう会えない気がしていた。櫻堂は煖が子どもの頃の遊び場であり、たびたび遊
山に訪れた場所でもあった。前夜、年甲斐もなく遊山箱を庭に叩き付けたことが悔や
まれてならなかった。
 結子は抱き桜の傍に立っていると、今度は根元からの息吹にふと俯いた。若い芽が
二本、力強く天に引っぱられるように伸びている。何の新芽だろうか。それは灰燼の
中で朝陽を浴びて輝き、しなやかで美しいものだった。二本の芽には一つの赤い輪が
填められ、仲睦まじく寄り添っているように見えた。結子は芽が千切れないよう、丁寧
に輪を引き抜いた。輪は水引で作られた指輪だった。しかも、家の水引で作られたも
のだった。その独特の結びは煖にしかできないものであり、結子はもうこれ以上、二
人を捜しても見つからないと思った。それは十五の時に父、敦平を諦めた時と同じ匂
いだった。煖が禾穂のために結んだであろう赤い指輪を、結子は櫻堂のお大師さんに
委ね、気の済むまで両手を合わせた。(了)
                                   鉄線

※先月から連載してまいりました『炎の桜』。最初から最後まで
読んでくださったかた、どうもありがとうございました。感謝です。

  


             
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『炎の桜』⑧
- 2015/01/02(Fri) -
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「禾穂さんは不思議な人ですね。穢れを知らない少女のように感じる時もあるし、
酸いも甘いも噛み分けた老婆のように感じる時もあるし、雲のようにつかみ所が
ないですね」
 煖は禾穂の唇に吸い寄せられるように自分の唇を重ねた。山の四月の風は素
肌には肌寒かったが、二人はそんなことも忘れるほど、抱擁を繰り返した。禾穂は
煖に二百年の間に感じたことのないような熱情を抱いていた。それは身が粉々に
なってしまいそうなほどの猛々しさで、抱かれれば抱かれるほど、煖を食む気持ち
が薄れていくのだった。
「煖さんも太股に左右対称のホクロがあるんですね。昔、誰かの太股にも同じよう
な左右対称のホクロがあったような。誰だったかしら」
 煖に髪を撫でられているうちに禾穂は誰の太股にホクロがあったのか思い出した。
赤子である。焼殺された赤子にも太股に左右対称のホクロがあった。同じ場所に
ホクロのある煖をふと赤子の生まれ変わりのような気がして、ますます食むことが
できなくなってしまった。
「禾穂さんは何だか懐かしい香りがしますね。ずっと前に嗅いだことがあるような、
ないような。母さんと一緒にいるより落ち着く」

 家に戻った二人の間に何かがあったことを結子は感じ取っていた。禾穂は結子
の怒りを感じ、わざわざ結子の目の前で煖の手を強く握って見せた。その瞬間、
結子は禾穂に殺意を抱いた。煖も敦平のようにある日突然、居なくなるような胸騒
ぎがし、煖に外に出ないよう言い渡した。
「外出禁止って、もう子どもじゃないんだから」
「子どもでも大人でもないのが集落に紛れ込んでいるかもしれないから気を付けな
いと」
「母さん、まだそんなこと言ってるの?」
 煖は禾穂の手を引き、笑いながら母屋を後にした。煖が別人になってしまった、と
結子は悲しかった。何を言っても取り合ってもらえず、禾穂が物の怪かもしれないと
疑うようになってから、結子の頭は禾穂をどうやって追い払うか、それのみだった。
 禾穂は禾穂で、心は煖のことでいっぱいになってしまった。煖に助けられた時から
煖のことが気になってはいた。だが、性懲りもなく男を好きになる自分を認めたくなか
ったのだが、赤子と同じ場所にホクロがある煖が愛おしくてたまらなかった。一度溢れ
出したその想いを水道の蛇口を捻るように簡単に止めることはできなかったし、煖に
は気持ちを伝えたかった。しかし、愛を告白した瞬間、禾穂は燃えて灰と化してしまう。
二度と煖に会えなくなる。結子には山姥ではないかと大いに疑われている。時間的に
迷っている暇はなく、山姥も愛する人に想いを伝えたい。それが結論だった。

 煖は満開を迎えている抱き桜の夜桜見物に禾穂を誘った。禾穂は納屋で見つけて
おいた赤と青の遊山箱それぞれに巻きずしや果物、酒の肴などを詰めた。冷酒も少し
水筒に入れ、用意した。
「赤い箱が母さんの遊山箱。僕のは青い箱。子どもの頃、二人でよく遊山に出かけ、
母さんの分まで僕が食べていたな」
 楽しそうに出かける準備をする二人の間に結子が割って入った。
「煖もあの頃が一番かわいかったわ。また勝手に納屋から思い出の品を引っぱり出
して。禾穂さん、家の中を引っ掻き回すのはいい加減にして」
「母さん、僕が使っていいと言ったんだ。ちゃんと戻しておくから気持ちよく貸して」
 結子は赤と青の遊山箱の両方を禾穂から奪い取り、縁から庭先に叩き付けた。美
しい彩りの巻きずしや果物が土の上に転がり、ままごとで出される食べ物のようにな
った。
「禾穂さんに貸すくらいなら、こうしたほうがマシよ。人の家に入り込んできて、なに勝
手なことしてるの。出て行きなさい。今日限り、この家から出て行って」
 禾穂は結子に息を吹きかけ干物にしてしまいたかったが、煖の手前、思い止まった。

 煖は禾穂の手を取り、家から走るように出た。何も言わず、ただ山道を下りた。こん
なに荒れた煖を見るのは初めてだった。抱き桜まで禾穂と手を繋いだまま、煖は一言
も話さなかった。夜桜といっても、ライトアップされているわけではなく、花盛りではあっ
たが、二人の他には誰も居なかった。機嫌の悪かった煖も月明かりの下で抱き桜を眺
めているうちにいつもの穏やかさを取り戻した。
「自分の集落の桜がこんなに美しいだなんて、今まで気づかなかった。何となく禾穂さ
んに雰囲気が似てるな、この紅しだれ」
「私もそう感じて、ここにやってきました」 (つづく)

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『炎の桜』⑦
- 2015/01/01(Thu) -
IMG_8559家

「禾穂さん、何処に行ってたんです?」
 夜明け前、いつものように白梟に変化し、抱き桜から家に戻る途中、いつも
と違う様子、焼け焦げた臭いに少し手前から禾穂になり、歩いて帰った。家の
敷地に入るや否やの煖の問いかけに禾穂は焦った。夜、納屋を空けていたこ
とがばれ、尤もらしい答えを探す禾穂の頭の中には千の沢蟹が迷い込み、暴
れ回っているようだった。
「眠れない夜は散歩に出かけています。今、桜の頃ですし」
「今までずっとですか。山犬もおるし、獣の仕掛け罠もあちこちにあるし、」
「夜、歩くことには慣れていますから」
「慣れているかもしれないけれど、居候している間は勝手なことされては困るわ」
 結子の荒々しい声に禾穂は煖を見た。
「風呂の焚き口から火が出てね。ボヤで済んだんだけど、それより禾穂さんが納
屋にいないことで大騒ぎになって」
「風呂の火の始末をしてから休んでねって、あれほどお願いしたでしょう。幾ら火
が恐ろしいからって無責任すぎるわ。母屋に燃え移っていたらどうするの。私も煖
も焼け死ぬところだったのよ。それとも、ご両親みたいにそうなればよかったのか
しら?」
 結子は禾穂に容赦がなかった。出会った時とは別人のようだった。勿論、最初は
そうではなかったが、禾穂に対する風当たりは徐々に増大していった。最後に入る
風呂にはくるぶしほどしか湯が残っていなかったり、湯がある時には大量の羽虫が
浮いていたりした。煖が会合で家を空ける日は禾穂の分の食事がなかったり、あり
えない味つけだったりしたが、そんなことでめげる禾穂ではなかった。納屋に保管し
てある備蓄米を日に一升、二升と遠慮なく食べたり、結子が大切に育てている花を
一夜のうちにドライフラワーにしてやった。自分にだけ向いていた煖の気持ちがよそ
者に向き始めた嫉妬だと禾穂にはわかっていた。結子を食むのは簡単だったが、
煖に気づかれ、計画が水の泡になるのは本意ではなかった。
「母さん、言い過ぎだよ。禾穂さんは火が恐いんだから火の始末を頼んだ僕たちが
いけなかったんだ。これからは僕が確認するから」
「どこまで肩を持ったら気が済むの。一晩中、歩いてたなんて嘘に決まってるでしょ。
土地勘のある私でも夜は恐くて山の中を歩けない。そんなことができるのは山姥くら
いだわ」
「山姥だなんて、あんまりです」
 煖に気づかれぬよう、禾穂は一瞬、もの凄い形相で結子を睨みつけた後、泣きなが
ら家を飛び出した。勿論、嘘泣きである。背後に煖の息遣いや足音を感じながら、禾
穂はそろそろお暇(いとま)する時がやってきたと感じていた。 


    四   炎の桜
 来不ヶ谷集落の櫻堂にある抱き桜は今、八分咲きを迎えている。桜はそのくらい
が最も美しい。昇る太陽の光が差し込み、抱き桜は神々しく輝き、桜に抱き付いて
号泣する禾穂もまた黄金色に光っていた。桜の花びらように儚く、掴まえていない
といなくなってしまいそうな美しい女を煖は背後から抱きしめずにはいられなかった。
「この半年、集落の納屋という納屋から米や芋が消え、みんなが神経質になってい
て、ボヤも山姥や山父の仕業ではないかって言い出してね。火を出して気が立って
いたんだと思います。母さんが言った失礼なこと、僕から謝ります」
「私の不注意でお世話になっているかたの大切なものを全部燃やしてしまうところで
した。ごめんなさい」
 禾穂は結子が自分の素性を訝しがっていることを薄々感じていた。煖は結子ほど
敏感ではなく、禾穂の涙を親指で拭いてやった後、禾穂の唇に自分の唇を重ねた。
それには禾穂も驚いた。モーションを掛けるのは自分のほうからと思っていたので
手間が省けた。この後、二人は人気のない山の中で逢引をした。禾穂も大概、道と
いう道には詳しかったが、初めて通る道、場所だった。手を繋ぎ、一日歩くなど二百
年の間でこれまた初めてだった。
「ここ、僕の隠れ家なんですよ」
 雑木の中に四畳半ほどの木造小屋が建っていた。「煖房」と表札が掛かり、中は
板の間で昼寝ができ、コーヒーや茶が飲めるよう、小さなカセットコンロと小さなや
かんが置かれていた。風呂の薪を集めにきたついでに少しずつ建てていった小屋
だった。
「独りになりたい時もありますから」
 結子と煖。仲が良く、いつもべったりに見えていたが、男というのはこういう一面を
持ち合わせているのだ、と禾穂は苦笑した。二人は沢から汲んできた水でコーヒー
を沸かして飲んだ。禾穂は自分が山姥であるのを忘れ、煖との逢引を心から楽しん
でいることに再び苦笑した。昔、人間だった頃、同じように楽しいひとときがあったと
いう記憶だけが身体の中にかすかに残っていた。煖に惑わされてはいけない。禾穂
はいよいよ煖を食する時が来た、とコーヒーカップを置き、煖を見つめた。(つづく)

                                    鉄線


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