
澄明な川の傍らに、廃校がありました。場所は‥‥、場所は
ナイショです。ごめんなさい。人が訪れることで荒らされ、風化
が思いの外、加速してしまうのが何となく哀しい‥‥。
私は、こういった既に終わってしまった空間や建物に自然と惹
かれるようです。『月の道』という軍艦島の廃墟を撮った写真集
を手にしたのは、約20年前。今でも大好きな写真集の1冊で
あり、軍艦島は機会があれば、訪れたい場所、空間でもありま
すね。
この廃校にたまたま出くわし、写真を撮りながら、やはり、自分
は"廃の世界"、"無常の世界"に惹かれることを確信しました。
私の通った中学も、バレーボール部も、今はもうなくて、それを
とても残念に思います。学校や部活に限らず、心はとても欲して
いるのに、帰りたくても帰る場所がない。家もそうですね。これは
かなりきついかなぁ‥‥。帰ることのできる場所、心の拠り所と
なる空間や人を持っている人は、とても幸せだと思いますね。
"廃の世界"にいると、そこにあるいろんなものが語りかけてくれ
るようで...。人の息吹や体温が感じられた時代を思い浮かべ
ながら撮ることに、魅力を感じてしまうのです。逝ってしまった空
間ではあるけれど、人の息吹、体温を感じられなくなった空間では
あるけれど、残されたものたちは、細々乍らまだこうして微かに生
きているのです。この蛇口を見た時、まだ生きてる、と感じました。
逝ってると思ってるのは人間だけで、実際は日々必死で生きてて、
逝ってないんだ、って。
この蛇口。捻られることがなくなって、どれくらい経つのでしょうか。
この蛇口の向こうには、澄明な川が流れ、こうして草木が生い茂る
前は、とても美しい校舎だったに違いありません。久しぶりに人の
息吹や体温に触れ、この廃校は嬉しかったのではないでしょうか。
と、これまた想像なんですが...。

この廃校を訪れてから、また訪れたいとずっと思っていて‥‥。
"廃の世界"は、私にはとても気になる空間、領域のようです。
蛇口も、オルガンも、何も語ってはくれないけれど、心に伝わって
くるもの、訴えかけてくるものがそこにあります。私はそれに惹か
れているのだと思います。そして、これからも、たぶん...。
鉄線