素心蝋梅、一輪
- 2014/12/31(Wed) -
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今年の撮り納めは美波町で。スナップを撮りながら散策していると、
素心蝋梅が一輪、咲いているのを見つけ、何だか嬉しくなりました。
2014年も今日でおしまい。明日からまた新しい年が始まりますね。
今年もTESSEN'S CAFÉをご愛顧いただき、ありがとうございました。
来年もどうぞよろしくお願いいたします。皆様、よいお年をお迎えくだ
さいね。明日、明後日は曇時々雪の予報。寒い正月になりそうです。
素心蝋梅は、好きな花のひとつ。得した気分です。(^-^)

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全国ジュニアユースサッカーフェスティバル2014 in 徳島
- 2014/12/31(Wed) -
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全国ジュニアユースサッカーフェスティバル2014 in 徳島の1コマ。
吉野川南岸グランドにて(2014/12/28) 甥っ子弟も、KELT FCで
がんばってました♪KELT FCのテントまで会いに行くと、甥っ子弟
は、仲間たちに「父さんのおねえさん!」と紹介してくれました。(笑)

『とんとんとん』の甥っ子弟。中学生になり、この1年で凄く成長した
気がします。約1年ぶりに甥っ子兄、甥っ子弟に会えて嬉しかったな。
(http://tessen413.blog118.fc2.com/blog-entry-3329.html)
最終日は雨が降る中での試合。寒いなか、皆さんお疲れさまでした。
来年もケガに気を付けて、精進してね。
                              鉄線


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『女・写真家として』/石内 都
- 2014/12/29(Mon) -
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シリーズ いま、どうやって生きていますか?③
『女・写真家として』/石内 都
2014/12/10初版第一刷発行。
発行、発売 編集グループSURE

今年も元・新聞記者からたくさん本をいただいた。石内 都さんの本も
その一冊。私は写真家をほとんどしらない。石内 都という名前も今回
この本で初めて知った。自分で現像したことかないので、暗室云々の
行(くだり)については、読みながら想像することができなくて残念だっ
たが、今年いただいた本の中ではこの本が一番、おもしろかったかな。
機会が在れば写真集も見てみたいが、この本から感じている石内像
と写真は、見たとき合致するだろうか。
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ぐるっぽ・ふぉと23写真展 in 徳島阿波おどり空港
- 2014/12/29(Mon) -
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写真展のご案内をさせていただきます♪
ただいま『ぐるっぽ・ふぉと23写真展 in 徳島阿波おどり空港』が開催されて
います。テーマは、「徳島」。期間は、2014/12/28~2015/1/14まで。
なお、空港駐車場は1時間以内は無料ですので、ぜひともご覧くださいね。
あなたのしらない「徳島」がそこに在るかもしれませんよ。

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『炎の桜』⑥
- 2014/12/29(Mon) -
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 家隣にある納屋の二階が禾穂の部屋だった。一階には農作業の道具や
普段使わない家財道具、薪、米、野菜などが置かれていた。敦平が生きて
いた頃、こっそり情け宿として貸していた小屋だったが、今ではそれを知る
者もおらず、煖が手を入れ、寝泊まりできるよう直してやった。
 夜、生米を頬張りながら、納屋に置かれているレコードを聴くのが禾穂の
楽しみだった。ひっそりした山奥でクラシック音楽を聴いていた敦平とは、
どんな男だったのだろう。情け宿をしながら敦平もまたこの部屋で誰かを愛
したのだろうか。結子を男手一つで育て、山で遭難したという敦平に会える
ものなら会ってみたかった。季節はいつしか春を迎えていた。食あたりを起
こし、煖に助けられてから七ヶ月が過ぎようとしていた。

「禾穂さん、父の写真、残っていたわ。どんな人か見たがっていたでしょう」
 朝の食事が終わり、三人でお茶を飲んでいると結子が不意に敦平の写真
を禾穂に見せた。
「写真を見ると寂しくなるから全部焼いてしまったんだけど、古本の間に一枚
挟まってたの」
 結子がそう言い終わらないうちに禾穂の顔は見る見る蒼白になった。
「禾穂さん、具合でも悪いの?大丈夫?」
 煖はそう言いながら写真を覗き込んだ。別段変わったところのないスナップ
写真である。結子も禾穂の尋常でない脂汗を心配しながらも、その様子を訝
しく感じていた。
「もしかして、父と面識あるの?」
 女の勘だった。
「まさか。禾穂さんは僕より若いんだし、爺ちゃんが亡くなってから生まれてる」
 一瞬見せた禾穂の焦りの表情を煖は見逃しても結子は見逃さなかった。
「亡くなった父にとてもよく似てたものですから、びっくりしてしまって」
 苦し紛れに付いた嘘だった。まさか、四十年ほど前にここから少し離れた山
の中で誑かし、食んでしまった男が敦平だとは言えなかった。確かに記憶に
残るほど食んでしまうには惜しい男だった。父を殺され、十五で独りになり、十
七の時に捨て子を拾い、内職をしながら煖を育て、生きてきた結子を思うと、
禾穂は結子と目を合わせられなかった。罪悪感を感じたのは二百年間でこれ
が初めてだった。煖のことがなければ、禾穂はこの家から直ちに退散しだろう。
だが、半年以上も時間をかけて狙っている獲物をそのままにして離れるわけに
はいかず、具合が悪いと仮病を使い、部屋を後にした。
 
 納屋の小窓に飾ってある一輪挿しの花が枯れると、煖は野に出て、わざわざ
花を摘んできた。そんな息子の様子を結子は気が気でなかった。煖が具合の
悪い禾穂を抱きかかえて戻った時、何れこんなことになるのではと結子は予感
していた。母屋の空き部屋にという煖の言葉を却下し、納屋に禾穂の部屋を構
えさせたのは結子だった。それでも納屋に時たま出入りする煖を結子は嫌った。
 禾穂は張り巡らせた蜘蛛の巣の端に煖が入り込んできた気がしていた。煖が
摘んできた窓辺の花を見ていると、禾穂の脳裏には煖と絡み合うシーンがリア
ルに浮かび上がってくる。予感だった。自分の横で気持ちよさそうに眠る煖の体
を山姥の太くて長い舌がするすると静かに巻き上げ始める。舌は真っ赤で、その
表面は猫の舌のごとくざらざらで、煖は巻きずしの芯のように幾重にも巻かれ、
締め上げられ、失神したところを丸飲みされる。煖がこの世からいなくなれば、結
子も集落の娘たちもさぞかし悲しむことだろう。結子は敦平に続き、煖も失うこと
になる。不意に沸き上がってくる微かな仏心を抑え込むのに禾穂は難儀した。
「愛する者を一瞬にして失う悲しみを味わうがいい。愛する者に一夜にして裏切
られる苦しみを知るがいい」
 煖が愛の言葉を口にした瞬間、禾穂は容赦なく食もうと思っていた。愛など糞
食らえだった。禾穂は一輪挿しの花にふうーっと息を吹きかけた。花は一瞬にし
て生気を失い、ドライフラワーになった。納屋を走るネズミやイタチも禾穂の機嫌
が悪い時は何処までも伸びる長い髪によって捕らえられ、息を吹きかけられ、干
物にされた。

 夜、母屋の灯りが消えると、禾穂は納屋から抜け出し、抱き桜まで寝に帰った。
独りになり、素の状態で眠りたかったし、抱き桜の中で寝ていると、好きな男に抱
きしめられたまま寝ているような安堵感があった。そして、今、花は八分咲きを迎
えており、櫻堂を含めた抱き桜周辺の景色は絶景だった。(つづく)

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『炎の桜』⑤
- 2014/12/27(Sat) -
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 結子が昼餉に重湯を運んできた。
「少し身体に何か入れないと体力が戻りませんよ」
 子どもを諭すように優しく話しかけてきた結子は柔らかで美しかった。
非の打ち所のない結子に禾穂は嫉妬し、身体に入れたばかりの重湯を
その場に遠慮なく戻してみせた。戻したものを嫌がる素振りも見せず、
丁寧に拭う結子の指先は繊細で色気があり、禾穂はその指にまで嫉妬
した。
 嫉妬。これも二百年の間、ずっと忘れていた情だった。人間ごときに嫉
妬する自分を禾穂は体調が悪く、イライラしているせいだと思っていた。
結子が部屋から出て行った後、禾穂は何だか疲れ、横になった。知らない
うちに寝入り、また男どもに拉致され、焼殺される夢を見た。今になり、どう
して繰り返し思い出されるのか。見たくないのに見てしまう。夢にうなされる
禾穂の呻きは、煖に抱き起こされるほど激烈だった。
「大丈夫ですか。しっかりしてください」
 煖に起こされ、禾穂は夢なのか現実なのかわからなくなっていた。煖が一瞬、
愛していた頃の一汰に見え、しがみついたが、すぐ正気を取り戻し離れた。
「すみません。間違えました」
「大丈夫ですか。あんまりうなされていたから起こしました」
 禾穂の身体は寒くもないのに小刻みに震え、止まらなかった。二百年前の傷
がこの集落にやって来てから疼き出した。完治に近いと感じてきた傷は少しも
癒えていなかった。その事実に震えが止まらなかったのかもしれない。煖は禾
穂の頬を伝う涙を拭おうと手を伸ばしたが、禾穂は物凄い勢いでそれを払い除
けた。煖は何も言わず、部屋を後にした。

 それからしばらくして、煖が花を摘んで部屋に戻ってきた。しなやかで素朴な
風合いの一輪挿しに、かわいらしいピンク色の小花が三本、活けられていた。
「少しは落ち着きましたか。気分が変わればと思い、花を摘んできました。山の
中ですから花屋もなく、こんな野辺の花しかなくて」
 何てかわいらしい男なのだろう。禾穂は煖の垂れた小さな瞳を見た。
「かわいい花ですね。さっきは取り乱してすみません」
「赤花夕化粧っていうんですよ」
「アカバナユウゲショウ?」
「ええ、夕方になると赤色の花を咲かせるから、赤花夕化粧です」
「赤花夕化粧をどうもありがとう」
 結子は襖越しに若い二人の会話を聞いていた。煖が結子以外に花を摘んで
くるなど初めてだった。女は一体何処から来たのだろう。何をしにこの集落にや
ってきたのだろう。どういう素性の女なのだろう。襖の向こうで二人が激しく絡み
合う映像が結子の脳裏を掠めた瞬間、結んでいた水引の一本が切れた。結子
が水引を切るなど、かつてないことだった。


    三   因 縁
 禾穂が煖に助けられてから半年余りが過ぎた。禾穂が天涯孤独ということを
知ると、結子も煖も同じ境遇のため、別段行く当てもないと言う禾穂に「出て行
け」と無下に言えなかったし、気が利き、何でも器用にこなした。ただ火が恐ろ
しいため、火を使う家事には赤子のようだった。
 居間横の作業場で結子と煖は水引を結び、禾穂は居間から煖を見ていた。
どうすれば煖の気持ちを自分に振り向かせられるのか、そればかり考えていた。
その尋常ならぬ視線に結子は嫌悪感を抱きつつ、日々水引を結んでいた。
「禾穂さん、ずっと聞こうと思ってたんですが、なんで火が恐いんですか。マッチ
を擦ることもできないし」
 煖の不意の問いかけに禾穂は一瞬ドキリとしたが、禾穂以上に驚いたのは結
子だった。煖は人に対して興味がなく、特に女性には無関心なところがあった。
そんな煖が仕事のこと以外で女性に質問するなど極めて珍しかった。
「小さい頃、両親を火事で亡くしてから火が恐いんです。それから親戚を転々とし、
追い出される理由はいつも『お前は茶の一つも入れられないのか』って」
 嘘である。自分は二百年前、男に捨てられ、赤子とともに男やその家族に焼殺、
怨念から山姥に変化した、などと言えるはずもなかった。煖は嫌なことを思い出さ
せてしまい、申し訳なかったと詫びた。
「今まで独りで苦労してきたのね」
 結子に優しく声をかけられると、さすがの禾穂も焼かれた時の記憶が甦り、思い
がけず涙ぐんだ。煖が立とうとするより先に結子は禾穂の傍に行き、子どもをあや
すように禾穂を抱きかかえ、背中をさすってやった。煖に少しでも近づきたいと思
っている禾穂は、余計なことをする結子の華奢な身体を骨が軋むほど抱き返した。
 余計なことをすると言えば、結子も禾穂に対し、そんなふうに感じていた。この家
の言うことなしだった調和が、禾穂が加わることによって微妙に崩れ、以前とは異
なる空気感に居心地の悪さを覚えていた。
「凄いなぁ、禾穂さんは。一回見ただけで結べるんだから」
 煖が驚くのも無理はなかった。禾穂は一人前になるまでに何年もかかる水引細工
を、結子や煖が結んでいるのを横で一通り見ているだけで同じものを作ることがで
きた。見たものに姿を変えたり、作ることができるのは山姥の能力の一つだった。
そうとは知らぬ結子はますます禾穂のことがおもしろくなかった。山奥の一軒家で
暮らし、今まで自分だけに向いていた煖の心が自分より若くて美しい禾穂に日ごと
に惹かれていくのが傍にいて自分のことのようにわかった。結子は禾穂が現れ、煖
に対する自分の心を初めて素直に認めた。母親としてではなく、女として煖を愛して
いると。同じ女として禾穂もまたそのことに気づいていた。人間の禾穂ならそう気づ
いた時、この家から去り、身を引いたであろうが、山姥として生きる今、何事に対して
も容赦などなかった。(つづく)
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"Cow Shed " 静けさの中で
- 2014/12/26(Fri) -
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"Cow Shed " (2014/12/14・名東郡佐那河内村上大川原)

幾度となく訪れた茶屋なのに、"Cow Shed "という木札がぶら下がって
いるのに気づかなかった。12月。今年は例年より寒く、雪も多い。この
"Cow Shed "の頭にも雪が積もり、それを払いのける店主も今はいない。

静けさの中だから気づくことがある。考えが気泡のように浮かび上がる
こともある。今でも喧噪な街や場所、人が苦手である。特にコッコッコッコ
と鶏のごとくひっきりなしに話す人。静けさの中で生まれ育ったから、かも
しれない。                              
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『釣り上げては』/アーサー・ビナード
- 2014/12/23(Tue) -
釣り上げては

『釣り上げては』/アーサー・ビナード (1967/07/02生まれ)
アメリカ合衆国、ミシガン州生まれの詩人・俳人、随筆家、翻訳家。

良い感性してるなー、って読みながら思う。『釣り上げては』は、
中原中也賞を受賞。年とともに心の奥へ奥へと押し遣られ、埃を
被った若い頃のみずみずしく伸びやかな感覚を呼び戻してくれる
ような一冊。
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『炎の桜』④
- 2014/12/23(Tue) -
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「すぐ治まりますから、かまわず行ってください」
 煖は具合悪そうに唸り、うずくまる女の背中をさすろうと触れた瞬間、その場に
禾穂は失神してしまった。剪定鋏を取りに行った煖が女を抱きかかえて戻り、結
子は腰が抜けそうになった。煖は居間で禾穂を抱きかかえたまま経緯を話し、奥
の自分の部屋にふとんが用意されるのを待った。女の苦しそうな呻きに顔を覗き
込むと、具合の悪さから相変わらず血色が悪かったが、結子に劣らぬ美しさだと
煖は思った。実際、結子より若い分、禾穂が数段美しかった。
 しばらくして意識を取り戻した禾穂は昼間、覗いた煖の家に自分がいることに驚
いた。襖の向こうから聞こえてくる二人の会話に禾穂は白々しい出会いをわざわざ
段取りしなくて済み、ほくそ笑んだ。
「きれいな娘さんね。どこの人かしら」
「初めて見る人だね。かなり具合が悪そうだったな」
「診療所の先生に診てもらったほうがいいわね。往診していただけるかしら」
「後で聞いてみるよ。それより母さん、畑の梨、全部なくなっていた。一つ残らず全
部。サルの仕業かな」
「全部って、今朝、今年は豊作だって言ってたじゃない。幾らサルでも全部は無理
でしょう。気味が悪いわ」
「処分しようと根元に集めておいた腐った梨までなかったし、今年は出来がいいか
らご近所に配ろうと思ってたのにな」  
 襖越しに腐った梨と聞こえた瞬間、禾穂は腹にドリルで穴を開けられたような猛
烈な痛みに襲われ、再び気を失ってしまった。そして、まだ人間だった頃の夢が嘔
吐物のように次から次へと腹から沸き上がってきた。山姥として生きるようになって
からは夢など見たこともなかった。恋人だった一汰を見るのも二百年ぶりだった。
今の禾穂にとって男は生き餌だったが、一人の男を心から愛し、その男の子どもを
宿し、産み落としたこともあったのだ。お日さまのように笑う我が子の夢も二百年ぶ
りで、我が子とともに焼殺された光景までも容赦なく再生された。

 翌朝、目が覚めると付き添っていたのが煖で禾穂は驚いた。煖は部屋の柱にもた
れかかり、濡れタオルを握ったまま眠っていた。集落の女たちを虜にしてやまないと
いう男をまじまじと見た。うっすらと無精髭が生え、寝息を立てながら寝ている姿は
ごく普通の青年である。格別どうってことはない。このくらいの男なら何処にでもいる
し、喰ってもきた、と禾穂は気落ちした。
「気分はどうです。顔色、だいぶよくなりましたね。まだお腹、痛みますか」
 不意に目を開けた煖と禾穂は視線が合った。目を開けてほほえむと、煖は歌舞伎
役者のような色香があった。声は低くてまろやかで、喋るたび、えくぼができた。
「何か口にできそうですか。粥でも作ってきましょうか」
 そう言いながら立ち上がった濃紺の作務衣を着た煖は長身でしなやかだった。痩
身で余計な肉や脂肪がなく、ひきしまった身体をしていた。集落の女たちが夢中に
なるのもわかる気がした。落とし甲斐があると思うと、禾穂の腹から俄然、活力が湧
いてきた。
「まだ何も欲しくはありません。一晩中、介抱してくださり、ありがとうございます」
「何も食べたくないなら、野辺の花でも摘んできましょうかね」
 煖の言葉に禾穂の作り笑いは一瞬、素になった。それからしばらくして、炊きたて
のご飯やみそ汁のよい香りが横たわる禾穂の部屋にも届いてきた。襖の向こうで
朝餉が始まっていた。椀や茶碗が食卓に当たる音を禾穂は懐かしい気持ちで聞い
ていた。襖の隙間から聞こえてくる結子と煖の会話はまったりと甘く、新婚夫婦のよ
うな味わいがあった。特に結子の声には異性に思いを寄せる愁いや情念を禾穂は
感じ取っていた。同じ女でありながら結子が男に抱くのは正の情念。自分が抱くのは
負の情念。その情念が余りにも強すぎ、自分は醜い山姥と化してしまった。二百年
前に焼殺されたことが蘇り、好きな男と同じ屋根の下で暮らしている結子の自信に
満ちた笑い声が勘に触って仕方がなかった。禾穂は上布団を頭まで被り、耳を塞い
だ。自分を捨てた男を、自分と我が子を殺した男どもを、この世の男という男を、禾
穂は許すことができなかった。(つづく)
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再び、奇跡の星の植物館へ
- 2014/12/22(Mon) -
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今日は代休。久しぶりに母とドライブに行ってきました。行き先は、兵庫県立
淡路夢舞台温室 『奇跡の星の植物館』。2014/11/23に訪れたばかりですが、
(母にも見せてあげたいな...)と思っていた場所なので、雪のちらつく天気
ではありましたが、思い切って淡路市夢舞台まで車を走らせました。

この植物館は屋内植物園で、6700平方メートルの規模を誇る日本最大級の
植物館。足腰が達者でなくなった母にはかなり大変だったようで、今回のよう
な歩きが入るドライブや旅行はもう無理かな、と感じました。そんな大した距離
ではないと思うのですが、無理をしてきたせいで自由に歩けなくなってしまった
のでしょう。寄る年波、といえばそれまでですが...楽しめないとかわいそうで
すものね。

お昼は建物内にある中華のお店でランチを食べました。その後、滅多にない
機会ですので、岩屋~東浦~洲本の国道28号、つまり、海岸線沿いをドライ
ブしながら帰ってきました。やはり、海がそばに見える道って、いいですね。大
きな大きな観音さんの横や、淡路ワールドパークおのころの横も通りました。
いかなごのくぎ煮を買って帰りました。久しぶりに連れて行ってやれてよかった。

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癒しの横顔・マヌルネコ
- 2014/12/22(Mon) -
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何てかわいらしい猫なんでしょう。この姿に一目惚れをしてしまいました。
「マヌルネコ」というネコ科ネコ属の動物で、ネコ科の中では最も古い種と
言われているそうで、マヌルとはモンゴル語で「小さいヤマネコ」という意。

しかし、このマヌルネコ。こうして横から見ると、ずっと微笑んでいるように
見えるんですよねー。この横顔に凄く癒されますし、この子自身も、まるで
それを知っているかのようにずっとこの体勢。(笑) 幾ら眺めていても飽き
なくて、後ろ髪を引かれる思いで園舎を後にしました。

神戸市立王子動物園で暮らしている動物たちの中で、個人的にはこの
マヌルネコが一番好きかな。パンダよりもコアラよりもこの子、癒しの横
顔を持つ、マヌルネコをぜひ見てほしいですね。徳島もこの子、入れて
ほしいなぁー。
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手前味噌な写真195 『アシカを眺める』
- 2014/12/21(Sun) -
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『アシカを眺める』 (2014/12/21・神戸市立王子動物園)

兵庫県立美術館で開催中の「だまし絵Ⅱ」展を見た後、近所にある
神戸市立王子動物園に行ってみました。ここにはパンダが飼育され
ていて、たぶん、パンダを間近で見たのは初めて?!だったかな。
写真は、アシカの水槽にて。
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「だまし絵Ⅱ」展/兵庫県立美術館
- 2014/12/21(Sun) -
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今日は、「だまし絵Ⅱ」展/兵庫県立美術館に行ってきました。ダリ、マグリ
ットなどが手がけた様々な仕掛けをもつ作品群。あーでもない、こーでもない
と言いながら、ヘッドホンで解説を聞きながら、人の波に揉まれながら...の
鑑賞。おもしろかったなー。

人の目をあざむくような美術作品、その系譜をたどった「だまし絵」展は、
2009年に東京・名古屋・神戸で開催され、75万人を超える入場者を記録
しました。 今回、その続編として、「だまし絵Ⅱ」を開催します。(HPより)


2014年10月15日(水)~12月28日(日) ※まもなく終了しますのでお早めに!
休館日:月曜日  開館時間:午前10時~午後6時 ※金・土曜日は夜間開館
(午後8時まで) ※入場は閉館の30分前まで

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白昼のシェアードルーム⑧
- 2014/12/20(Sat) -
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めずらしい白昼のシェアードルーム写真。(笑)
ウィークデーは、会社に行ってて留守。休日は、阿南に行っててこれまた
留守。なかなか白昼のシェアードルーム写真が撮れませんでしたが、
今日は朝から休日出勤。午後、明るいうちに戻って来れましたので撮影。
明け方から大雨。夕方まで遠慮なく降りました。いつも白昼はいないらしい
この子たちも、雨の日は行くところがないのか、こうしてシェアードルームで
ゴロゴロ。少し雨漏りしてますね...。晴れてから敷物、換えてやりました。

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『炎の桜』③
- 2014/12/20(Sat) -
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    二   母 子
 煖は今朝、自分の畑で収穫してきたばかりの梨を剥き、作業中の結子に声を
かけた。
「三時だよ。少し休んだらどう。今年の梨は甘くてみずみずしい。ようできとるわ」
「キリのいいところまでやってからいただくわ。午前中、昭恵ちゃんたちが尋ねて
来たわよ。野菜や果物をあんなにたくさん。煖、ほんまに結婚したい子はおらん
の?」
 煖は土間に積み上げられた野菜を見ながら苦笑し、なかなか手を休めようとし
ない結子の口に自分が食べていた梨を入れてやった。
「もう、煖ったら。母さんの話、ちゃんと聞いてるの?」
 結子はようやく水引を結ぶ手を止め、息子を見た。結子の手のひらには鳳凰の
形をした水引が出来上がっていた。
「どう、これ。鳳凰に見える?久しぶりの新作よ」
 煖は梨を一切れくわえたまま、結子の背中に回ると、肩を揉み始めた。結子は
息子に肩を揉んでもらって嬉しそうである。
「母さんみたいに何でもできて、何も求めん人が現れたら、すぐにでも結婚するか
な」
 煖の言葉を結子はまるで好きな男からの告白のように感じ、満面の笑みを浮か
べた。
「母さんこそ、いい人がおったら結婚しなよ。まだまだ若いんだし、きれいなんだし」
 結子は肩を揉む煖の手の甲をギュッとつねったが、つねられた煖も嬉しそうである。
「煖みたいに男らしいて、優しい人がおったら、母さんだってすぐにお嫁に行くわよ」
 ネズミに姿を変え、屋根裏の隙間から母子の会話を盗み見聞きしていた禾穂は
その言い回しや声の感じから母子らしからぬと訝しく思った。それは仲睦まじい母子
というよりは、女は確かに男を愛し、それは母としてではなく、女として目の前にいる
男を愛している。女の直感だった。

 結子と煖は実の親子ではなかった。結子は生まれて間もなく母を亡くし、それから
十五歳になるまで山奥のこの一軒家で父親の敦平に男手一つで育てられた。敦平
は仕事熱心で名の通った水引職人だった。誠実、子煩悩でも知られていたが、結子
が十五の時、山菜採りに出かけたまま戻ることはなかった。慣れ親しんだ自分の庭
のような場所での山菜採り。集落総出で幾日も山を捜索したが、見つかったのは竹
で編んだ背負子と、背負子に引っかかっていた異様に長く、テグスのように頑丈な
白髪一本だけだった。それから二年後、結子は水引を町へ納品しに行った帰り道、
来不ヶ谷への道標に吊された竹籠の中で泣き叫ぶ赤子を拾った。結子が覗き込んで
あやすと赤子はすぐ泣き止み、鈴が鳴るように笑った。独り暮らしの寂しさから逃れた
かったのと、人に見られなかったのを幸いに自分が産んだ子として育てることにした。
集落の人たちが赤子についてあれこれ尋ねなかったことや、衣類や食料の余ったの
を家の縁(えん)に切れることなく置いてくれてあったのはとてもありがたかった。煖は
中学を卒業する頃には近所の農夫に教わり、米も野菜も一人で作ることができたし、
水引も結子に負けないものを結ぶことができた。婚礼のブーケは大抵、生花で作られ
るが、煖が紙で作る水引のブーケは繊細で美しく、華やかさの中に愁いがあり、注文
が絶えなかった。
「何かしらややこしい匂いがする」

 禾穂は再びスズメに姿を変えると屋根裏を出た。外は薄暗くなっていた。ややこしい
匂いとは裏腹な甘い香りに誘われ、禾穂はたわわに実る梨畑までやってきた。果物に
目がない禾穂は食べ頃の梨を片っ端からもぎ取っては食べた。手でもぎ取るだけでは
食欲に追いつかず、長い白髪も四方八方に伸び、梨をもいでは口の中へと投げ入れた。
空にはいつしか月が上がり、月明かりの中に浮かび上がる禾穂のシルエットときたら、
この世の者たちがかつて見たことのない想像を絶する醜いものだった。周囲に誰もい
ない時、禾穂は山姥として生きる。今、梨園の中で梨を猛烈に食べている山姥の禾穂
である。その腹は妊婦のように膨らみ、牛一頭丸ごと飲み込んだほどの大きさだった。
三時間ほどの間に禾穂は煖が丹精込めて育て上げた梨を全部食い尽くしてしまった。
「あイタタ...」
 腐った梨まで胃袋に収めてしまった禾穂は案の定、激しい腹痛に襲われた。山姥で
も食あたりはするようである。畑のそばを流れる小川まで禾穂は牛一頭分の腹を引き
ずりながらやっとの思いで這い歩き、小川に向かって大量の溶けかかった梨をドォー
っと吐き出した。
「相変わらず、食い意地が張っとるのう」
 顔なじみの山父が別段、心配する様子もなく、笑いながら通り過ぎて行った。いつも
のように言い返す力もなく、あまりの腹の痛みに禾穂は気を失いかけたが、人の気配
を感じ、瞬時に人間に変化した。
「どうかしましたか?どこか具合でも悪いんですか?」
 自分の梨畑に昼間、忘れた剪定鋏を取りにやって来た煖は小川のほとりで月明かり
に白く浮かび上がる物体に気づいた。近づくと見たことのない女だった。(つづく)

                                  鉄線


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ご神木の木の下で
- 2014/12/19(Fri) -
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那賀町鷲敷にある蛭子神社。境内にある「夫婦杉」と呼ばれて
親しまれている2本の杉は、樹齢1,000年と言われ有名である。
個人的には、近くまで来ると、どうしても立ち寄りたくなる雰囲
気のある神社である。夫婦杉のほかにも境内には大杉が何本
もあり、見事。悠久の時間を感じさせてくれる大杉、ご神木群。

先週訪れた時、あるご神木の木の下に犬がいるのを発見。一
番奥にあるご神木で、犬が吠えなければ、手前の名残の紅葉
にも気づかなかったかもしれません。今年の12月は例年に比
べ寒い、寒すぎるのですが、まだ紅葉が残っており、得したよう
な気持ちで境内を出ました。

そうそう、去年、「杜舞台・那賀2013」でここを訪れた時、境内に
おられたかたが、おっしゃってました。「雪が降っても、ご神木の
周囲だけは雪が積もらないんだ」と。悠久の時間を生き抜いて
きたものたちというのは、それだけのエネルギーを秘め、蓄え、
現在(いま)に至るのでしょう。
                           鉄線


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一月ほど前、高丸山にて
- 2014/12/18(Thu) -
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一月ほど前に高丸山に登った時の往路写真。ヘンな恰好だなー。
往路の最初の頃と思われるが、この付近も既に雪が積もっている
のだろう。今年の8月末に初めて登り、この日、11月15日で5回め。
この山は頂上からの見晴らしがよく、気分爽快、大好きな山。よ~し、
来年も登るぞ-。 
                               鉄線



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『むかし、火薬店』
- 2014/12/18(Thu) -
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『むかし、火薬店』 (2014/12/13・那賀郡那賀町和食)

『むかし、たばこや』の斜向かいだったか、同じ町内にある
むかし、火薬店だったお店。散弾銃の弾がショーウィンドー
に陳列されています。ここもタイル細工のショーウィンドーが
懐かしい一軒。火薬店の名が書かれた窓も趣があります。
散弾銃の弾の下に陳列されている鉄製の丸い入れものって
何だろう?
                          鉄線






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北極熊、灯油缶で遊ぶ
- 2014/12/17(Wed) -
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とくしま動物園に今年3月にやってきた北極熊のポロロくん。
札幌市の円山動物園出身。2012年12月に生まれたという
から、2歳。この日は、灯油缶で遊んでいましたね。灯油缶、
ボロボロ...。寒いの、ほんと平気なんですねー。今日は
一日、雪マーク。凍ったり、積もったりしないといいけど...。

                        鉄線

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今宵のシェアードルーム⑦
- 2014/12/16(Tue) -
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今宵のシェアードルーム。厳寒のなか、ただいま4匹様ご利用中。
おかっぱん♂とシャドー♂は爆睡。カメラに慣れてきました?!
明日は雪の予報。雪やこんこ あられやこんこ 降っても降っても
まだ降りやまぬ 犬は喜び 庭かけまわり 猫はシェアードルーム
で丸くなる。ほんとは、こたつやストーブのあるところがいいので
しょうが、シェアードルームの向きを変えてやるくらいしかできない
かなー。
                             鉄線

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『むかし、たばこや』
- 2014/12/16(Tue) -
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『むかし、たばこや』 (2014/12/13・那賀郡那賀町和食)

こういう小さなタイルが貼られた陳列や流し台、洗面台は、
ほんとに見かけなくなりましたね。あまり馴染みのない場所
でも、こういう細工を見かけると、自分の中の「タイル」という
引き出しは独りでに開き、タイルにまつわる幼い頃の記憶が
次から次へと飛び出してきます。むかし、商売をしていた家
には、このように少し道に出た感じのショーウィンドーがあり
ましたね。我が家の実家にもありますが、むかし、そこには
何が置かれていたのか、小さな窓からどんな人が顔を覗か
せていたのか、時を遡れるなら、遡ってみてみたいです。

                         鉄線
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『炎の桜』②
- 2014/12/15(Mon) -
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 今から二百年ほど前、田上(たのうえ)禾穂はある農村の貧しい家で生まれた。
兄弟姉妹も多く、長女である禾穂は十五の頃から町の飯屋で働き、家計を助け
ていた。ボロの一張羅を着ていても元々見目形の美しい娘、年とともにますます
美しくなり、禾穂見たさに毎日通ってくる客人が日ごとに増えた。飯時になると、
店に入りきれない客人で店や店先はごった返し、その中には大きな商家の息子、
小出一汰もいた。禾穂より三つ上の一汰は最初、友人から禾穂の噂を聞かされ
た時、「飯屋で働くおなごに惚れるなどありえない」と見下していたが、実際に飯
屋に入ってみると他の男たち同様、禾穂の気だての良さに刹那にまいってしまっ
た。禾穂もまた一汰の育ちの良さからくる鷹揚さに惹かれるようになった。
 出会ってから半年後に二人は恋仲になった。禾穂は十八、一汰は二十一だった。
二人の家柄は天地ほど異なり、また、禾穂に好い人がいると世間に知れたら客
人は減り、店の売上にも係わってくるため、二人は密会を繰り返していたが、露
見してしまう出来事が起こってしまった。禾穂の腹が見る間に前へ前へと迫り出
してきたのである。
 二人の関係を知った一汰の両親は激昂し、ある商家の娘との縁談を早急に進
め始めた。一汰はできるものなら禾穂を嫁に迎え、添い遂げたかったが、赤い蕾
が黒い花を咲かせることがないようにありえないことだとわかっていた。一汰は自
力で禾穂との縁を絶ち切ることができず、親に縁切りしてもらうという情けなさで、
これにはお人好しの禾穂も呆れ果てた。二年も情を交わした男にあっさりと捨てら
れ、おまけに何者かに二度三度と命を狙われかけたため、禾穂はこっそり町を後
にした。
 一汰の祝言の日、産み月にはまだ二ヶ月もあったのに禾穂は産気づき、男の子
を出産した。禾穂に似て顔立ちの美しい赤子だった。その話は行商人によって町
まで伝わり、一汰や家の者たちの耳にも届いた。それからまもなくして、禾穂と赤
子は実家の納屋にいるところを何者かによって拉致され、山深い雑木の中に連れ
込まれた。
「番頭さん、助けてください。このとおりですから。せめて、この子だけでも助けて
ください」
 全身に油を振りかけられながら禾穂は懇願したが火を付けられ、容赦なく焼殺
された。急に禾穂と赤子が納屋から消え、殺められたことを知る由もない者たちは、
何日も何日も村のあちこちを捜し回ったが、禾穂と赤子をどうしても見つけることが
できず、いつの間にやら「天狗に隠された」という話がまかり通るようになっていた。
 一汰の護衛をしていた手代らによって我が身や赤子を焼かれながら、禾穂は自分
が言いようのない無念や計り知れない怨念の塊になっていくのを覚えた。それは
やがて凝縮された莫大なエネルギーの塊となり、その塊は意思を持ち、自ら燃え始
めた。手代らが付けた火をすっかり呑み込んでしまうほど燃え始めた禾穂の執念の
炎は大きな手に形を変え、手代らを掴んで放さなかった。それは瞬時に焼殺してしま
うだけの精力的な火力で、次に禾穂が目を覚ました時、その横に手代らが黒炭と化
し転がっていた。禾穂は自分らを殺めようとした手代がどうして逝ったのか記憶にな
かった。禾穂は一緒に火を付けられた赤子をあちこち探して小川に出た。全身、油臭
く真っ黒でみずぼらしい自分と、目の前に広がる美しい春の小川との隔たりに禾穂は
泣き崩れた。それは、小川の水が一気に外へ溢れ出すほどの泣きようで、禾穂は周
囲構わず気の済むまで泣き続けた。
 どのくらい泣いていただろうか。涙はいつしか涸れ、顔を洗おうと小川を覗き込んだ
時、禾穂は腰を抜かしそうになった。激烈な鼓動の心臓を手のひらで強く抑えながら、
もう一度、恐る恐る小川を覗き込んだ。やはり、この世の者とは思えぬほどの物の怪、
何とも醜い姿の老婆が背後にいるではないか。禾穂は勇気を振り絞って振り返ったが
誰もいない。水面を怖々覗き込むと、やはり、まだそこにいて、こちらの様子を窺って
いるではないか。
「物の怪はあっちへ行け。醜い物の怪に用はない。あっちへ行けったら」
 皮膚は垢染みて黒ずみ、三白眼だけがギラリと光を放っている。髪の毛は長く鈍色
をし、長らく櫛を入れていないふうである。目も耳も鼻も大きく、口角は目尻の下まで
切れ上がり、その色はハタンキョウの実のようだった。
「あんた、新入りの山姥かい。なかなかのべっぴんさんじゃのぅ」
 山姥。それが変わり果てた自分であることを、そばを通りかかった山父によって禾穂
は知らされた。
「やま、んば。私が山姥?」
「深い深い底なしの執念、怨念があんたを山姥として甦らせたんじゃ。あんたを殺し、
赤子も殺し、山姥に変化させた奴らを喰って喰って喰いまくれ」
 禾穂は二百年の間、山父のこの言葉を忘れたことはなかった。山姥になって一番最
初に向かった先は一汰の家だった。一汰をはじめ、自分と赤子を拉致し、焼殺に係わ
った人間どもを禾穂は全員、一夜のうちに喰ってしまった。毛髪一本、血液一滴さえ、
床に食べこぼすことなく、見事に平らげた。そんな様子を瓦版が忙しなく「神隠しが出
た」と町中に触れ回るのを禾穂は火の見やぐらから見ていた。
「何が神隠しじゃ。復讐はこれで終わりと違う。今から始まるんじゃ。世の中の男どもを
喰って喰って喰いまくってやる」
 禾穂はしばらく火の見やぐらにいて、小出の商家が衰頽していくのを見届けた後、町
から姿を消した。全国各地を転々とし、奥深い山の中をねぐらとした。火の見やぐらで
の言葉どおり、山姥になり立ての頃は、出くわした男を片っ端から喰った。山姥が獲物
を喰う姿など見たことない人が殆どであろう。その光景は一瞬で蛾を捕らえ、口の中に
しまい込む蛙を派手にしたようだった。目尻の下まである口角が、がま口の口金を開い
たように恐ろしく大きく開き、口金の中から繊毛が生えた粘り気のある太くて長い真っ赤
な舌が鞭のように伸び、確実に獲物を捕らえると、コイルのように巻き取り、がま口の中
に取り込むのだ。取り込んだ後の獲物を食む音といったら吐き気を催すほど凄まじい。
それを長年続けているとさすがに厭きてきて、ここ五十年ほどは男に近づき、充分その
気にさせてから、落ちた瞬間に容赦なく喰う、というやり方を楽しんでいる。それは、自分
が殺められたと同じやり方だった。憎悪の炎の中から生まれた山姥は惚れた男に「愛し
ている」と告げた時、その身体は再び燃え始め、人として成仏できるとの言い伝えがある。
何れにせよ、禾穂は火に対して宿命を持っている。人間だった頃の禾穂に変身し、男の
前に現れると落ちない男はいなかった。いとも簡単に落ちてゆく男どもを前に、禾穂が
本気になることはなかった。山姥と化してから二百年、身を許しても心まで許すことので
きる男はいなかった。おそらく三百年、五百年、一千年先も男は不誠実で、ええ恰好しい
の取るに足りない生き物に違いない。禾穂はスズメに変化したまま、次の標的のところへ
飛び立った。集落の娘たちを虜にして止まない男の家に向かっている。久々の大捕物に
禾穂の心はゴム鞠のように弾んでいた。(つづく)

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雪と青空
- 2014/12/14(Sun) -
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『雪と青空』 (名東郡佐那河内村大川原高原・2014/12/14)

大川原は雪。正午頃の気温は、-1℃~-2℃でした。
積雪は大したことありませんでしたが、厳しい寒さでした。

                          鉄線

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百獣の王のあくび
- 2014/12/14(Sun) -
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昨日は写真講座(撮影)でした。とくしま動物園(徳島市方上町・渋野町 )
での撮影。久しぶりに望遠付けて撮ったら楽しかったな。 安物の暗いレ
ンズなので、感度を上げても思ってる以上にブレも目立ったけれど。
懐と相談しながら、少しずつ必要な機材を揃えて行こうと思います。

しかし、猫もライオンも人の前で平気であくび しますねー。名前が付いて
る子たちは幸せで、名前を呼んでやると、明らかに距離が縮まりますね。
とくしま動物園。動物の数が少なくなったな...という印象でしたが、レッ
サーパンダがおすすめです。
                                鉄線

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『炎の桜』
- 2014/12/12(Fri) -
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 『炎の桜』

    一   変 化(へんげ)
 赤い欄干の橋を渡り、幅員狭小の県道を車で小一時間ほどくねりくねり走ると、
来不(こず)ヶ谷という過疎の集落に行き着く。山の緑が深くて豊かな来不ヶ谷には
昔から物の怪が棲んでいる、出くわしたが最後、二度と家に戻ることができないと
いう言い伝えがあり、含みのある集落の名はそんなところからきている。県道に添
うように彩葉(いろは)という名の川が流れ、鮎の友釣り専用区があちらこちらに設
けられているが、昔ほど鮎は捕れなくなっている。県道と川向かいの集落を繋ぐ
人専用の吊り橋が集落内には幾つも掛かっており、古くくたびれてはいたが、どれ
も現役の吊り橋だった。
 古いと言えば、集落には櫻堂と呼ばれるこぢんまりとした吹き抜けの御堂があり、
お大師さんが祀られている。そのすぐ横には桜の木が一本植わっており、その花は
息を呑むほど美しい紅しだれにも係わらず、あまり知られてはいなかった。御堂まで
の道程が酷道ということもあったが、集落の人々が天からの賜物として内々に愛で
てきた。その桜の大きさと形状は一度見たら忘れない。根回り周囲五m、樹高十八
m、樹齢二百年と言われるその幹は、根から天に向かって三分の一辺りから二本に
枝分かれをしている。そして、その二本は三分の二辺りでアルファベットのXの文字
のように交差し、妬けるほどしなやかに絡み合っていた。それはまるで恋仲の男女
が抱擁しているかのようであり、集落では「抱き桜」と呼ばれてきた。抱き桜は四月
には紅潮した女性の肌のような華やいだ色の花を咲かせ艶やかだっだが、どことな
く愁いがあり、妖しくもあった。
 来不ヶ谷では今日も嫁入り前の娘たちが畑仕事をしながら、櫻堂から二キロほど
山奥に入った一軒家で暮らす水引職人、中野煖(だん)の噂話をしている。たわわに
実る茄子や胡瓜は器量が悪かったが、若い娘たちに劣らぬほどみずみずしかった。
煖と付き合いたい娘たちは、川や畑で取れた魚や野菜の貢ぎ物を持って足繁く煖
の家に通った。年頃の娘たちの心を掴んで放さない煖という男は三十半ばの見目
形のよい独身で「たくさん取れたから」と日々尋ねてくる娘たちの思惑には気づかぬ
ふりをしている。「早く身を固めてこそ一人前」という集落の長老たちの諫(いさ)めに
も静かに笑っているだけで、とにかく驚くほど女っ気がなかった。煖は同じ水引職人
である母、結子と月光のごとく緩やかに山奥の一軒家で暮らしていた。娘たちは自
分もまた、煖の傍で日々幸せに暮らすことを夢見て、茄子や胡瓜に想いを託すの
だった。
「煖さん、誰か好きな人おるんかな。一緒に吹筒花火を見に行きたいんやけど」
「倫子ちゃんがホタル狩りに誘た時も仕事があるけんって断られたみたいよ」
「分限者で美人の倫ちゃんがあかんのやったら、うちが誘てもあかんかな。煖さん
はどんな女の人が好みなんやろね」
「煖さんのような寡黙で痩身には、うちらみたいにおしゃべりで、ちょっとふくよかな
女性がお似合いなんと違うかな」
 てんで勝手に熱を吹く娘たちに、禾穂(かほ)は枇杷の木からずり落ちそうになった。
「何がちょっとふくよかじゃ。ふくよかを通り越して、まるで土偶じゃ」
 禾穂は全国の山間を転々としている。最近、人口一千人ほどのこの集落にやって
きた。過去にも訪れたことがあるかもしれない。時の流れが緩やかな山間の集落の
抱き桜を栖としている。「樹齢二百年の紅しだれ」と町長が国から視察にやって来た
役人に畏まって説明しているのを小耳に挟んで以来、禾穂は自分と同い年の桜に
親近感を持ち、棲み付いた。
 推定年齢二百歳。幾ら何でもそれほど長く生きていられる人間はこの世にはいな
い。お察しの通り、禾穂は人間ではない。奥深い山に棲むと言われる老婆の妖怪、
人を喰らって生き続ける山姥だった。禾穂というのは人間だった頃の名で、山姥は
目に映るものなら何にでも姿を変えることができた。恐いものなしの禾穂だが、唯一
恐ろしいものがあった。火である。火への恐れは山姥の弱点というよりは、禾穂自身
の弱点だった。火を見ると脂汗が出て、気を失いそうだった。二百年もの間、マッチ
を擦ることや蝋燭を吹き消すことすらできないでいる。悲しい過去に因るものだが、
受けた傷の大きさ、深さを物語っている。
「久々に落とし甲斐のある男の登場じゃ」
 禾穂は娘たちが話していた煖という男に大いに興味を持った。見るのもおぞましい
妖怪と化した山姥の禾穂も、昔は美しくて心だての優しい真っ直ぐな娘だった。
                                        (つづく)

                                 鉄線



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今宵のシェアードルーム⑥
- 2014/12/11(Thu) -
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今宵のシェアードルーム。〆の牛乳でお腹が満たされたのか、
早々と19時に就寝。おやすみなさい。あれ、1匹いないな。
週末はまた寒波がやってくるらしい。シェアードルームも風向き
によっては、寒いだろうな。
                           鉄線

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今宵のシェアードルーム⑤
- 2014/12/10(Wed) -
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今宵のシェアードルーム。おかっぱん♂とシャドー♂とトラキチ。
シャドー♂の歯、少なくないかな?
                           鉄線

【乳歯(脱落歯)】
上の歯(片側)=切歯3、犬歯1、前臼歯3
下の歯(片側)=切歯3、犬歯1,前臼歯2
合計26本
【永久歯】
上の歯(片側)=切歯2、犬歯1、前臼歯3、後臼歯1
下の歯(片側)=切歯3、犬歯1、前臼歯2、後臼歯1
合計30本



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いいこと実感!できるかな。
- 2014/12/10(Wed) -
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寒い日が続いています。晩御飯の後、ウォーキングに出ておりましたが、
ここんとこ寒いので行かなくなりました。今年も20日ほどになりましたね。
もうすぐクリスマスなのですが、家のご近所、徳島市住吉1のビッグツリー。
徳島県LEDバレイ構想推進協議会の「光の八十八ヶ所めぐり」のひとつに
認定されており、今年で10年めだったのですが、今年は残念ながら点灯
しておりません。毎年ささやかに点灯させてくれていたご近所もこれまた
今年は点灯なし。クリスマス気分を味わうことなく、景気の回復も実感する
ことなく、1年が終わりそうです。写真は、兵庫県立淡路夢舞台温室「奇跡
の星の植物館」。日曜は選挙!選挙に行って、いいこと実感できるような
世の中になるといいな。
                               鉄線

 
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今宵のシェアードルーム④
- 2014/12/09(Tue) -
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今宵のシェアードルーム。おかっぱん♂とシャドー♂、既に爆睡。
おかっぱん♂の下敷きになってる子、朝まで体勢を変えずにいら
れるのか...。爆睡のおかっぱん♂、めずらしい。(笑)

                           鉄線

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スコールの中で咲くアナナス
- 2014/12/09(Tue) -
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兵庫県立淡路夢舞台温室「奇跡の星の植物館」で出あった花ではなく、
高知県立のいち動物公園の熱帯雨林エリアで見かけた花。私は薔薇
や蘭より、熱帯や南国で咲いているようなドーンとした雰囲気の花や木、
植物に凄く惹かれますねー。この花もスコールの中で咲いていた花。
すぐ下にはワニがいたりします。植物園ではないので花の名前は不明。
調べました。アナナス類 グズマニア・マグニフィカ。覚えられない...。

                               鉄線

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