昨日、所用で実家のある那賀奥まで行ってきた。那賀町に入り、しばらく
すると、道路脇に若いお坊さんが座っていて、凛とした雰囲気にア
クセラを止め、何をされているのか?と尋ねに行った。(行くな、行くな)
どうやら自分とこのお寺で催し物があり、その道案内に道路脇まで
出てきているのだと言う。「ここからすぐですので、よかったらどうぞ」
との声に、「それでは」と、しばし寄り道をすることに‥‥。
萬福寺(真言宗)というお寺は、このお坊さん同様、清潔感あふれる、
何とも気持ちのよいお寺だった。境内には、私の好きなロウバイの花
が咲き、寄り道した甲斐があった。
お寺の本堂に入ると、「拝宮和紙 書・版画・写真とのコラボ展」が
開催されており、私は展示されている和紙や写真に惹かれ、奥の間へ。
そこに展示されている何枚かのモノクロ写真を食い入るように見てしまう。
写真の中から人の笑い声や息づかいまで聞こえてきそうである。そして、
自分もまた、目の前の写真の中に立っているような不思議を感じさせて
くれる。
誰が撮った写真かを尋ねるために、パネルからふと視線を外すと、そこ
に写真集が置いてあり、そのタイトルを見た瞬間、私は鳥肌が立った。
『ぬくいぜんか』 ずっと探し続けていた写真集である。木頭の中野建吉
さんというアマチュア写真家の写真集。中野さんは昨年の12月にお亡く
なりになった。その時、中野さんのこの一枚に出会い、この写真が収め
られている『ぬくいぜんか』という写真集をどうしても見てみたい、と‥‥。
色々検索をしても写真集を取り扱っているところはなかったが、出会う運
命のものならば、何れ自分のところにやってくるだろう、と思っていた。
ものに限らず、人も同様、私はそう感じている。縁がある人とは何れ出会い、
縁があるものも何れ、自分の目の前に現れるだろう、と。たまたま訪れた
お寺で、探していた『ぬくいぜんか』を見た時、私は中野さんが呼んでくだ
さったような気がした。面識などなかったけれど、『ぬくいぜんか』を探して
いる女を空から見ていて、「こっち、こっち」と導いてくれた。やはり、縁の
ある写真、写真集だったのだ、と妙に納得している‥‥。
私は無理に縁を繋ごうとしない。去りゆくものを引き留めたりもしない。
そこに因縁が在るなら、縁は放っておいてもいつか必ず結ばれるし、
縁のないものを引き留めたところで、いつかまた離れていくのだろう。
「東大寺・極楽園」とは縁がなかったが、この写真集とは縁があった
ようである。
暖かくなったら、木頭を訪れたいと思っている。Ken's Gallery & Cafe
へ行ってみたい。Tessen's Cafeの実写版のようなイメージを抱いている。
鉄線
ずっと手元に置いておきたい写真集です。写真もさることながら、写真に
添えられた文章も味わい深く、中野建吉という写真家は、撮って、書くこと
のできる人だったんだな、と‥‥。
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